美しき秋

 視覚障害者に向けてのリーディング・サービスをする「音訳ボランティア」の活動を始めてこの秋で丸3年経ちました。先輩方にご指導いただきながら、この秋は初めて図書館に納める本の音訳に挑戦します。頑張らねば。

 所属している音訳ボランティアの会の活動の一環で、高齢者のデイホームで朗読をする機会がたびたびあります。その時に読む本を見つけるのがなかなか難しい。他愛のない話でも朗読の力があれば興味深く聞かせることができるのでしょうけど…まだまだ修行が足りません。

 

 本を探す中で素敵な詩を見つけました。高村光太郎さんの詩です。覚えておきたいのでブログに書きます。

美しき落葉  高村光太郎

 

私は交番の前で落葉をひろつた。

篠懸木(すずかけのき)の大きな落葉だ。

軸をもって日にすかすと、金色と緑青とが半々に この少しちぢれた羽団扇を染め分ける。

私は落葉が何でも好きだ。

落葉はいつでもたっぷりあって温かで さらさらしていて執着はなく、

風が吹けば飛び、いつの間にか又いちめんに積み重なって

秋の日をいつぱいに浴びてゐる。

落葉の匂ひは故国の匂ひ、わけて落葉をたく青い煙の親しさよ。

ああ林間に紅葉を焚いて酒を暖めた 昔の人のゆかしさよ。

今あたたむる酒はなくとも、人よ、君の庭に山と積む落葉を焚いて

君が家庭菜園の加里を得たまへ。

私は拾った篠懸木の一枚の葉を

如何に木で彫らうかと考へてゐる。

 

 

 

 

 見るものも出会うものもみんなそう大して変わらないのに。

1枚のすずかけの落葉を見つめる高村光太郎さんの瞳を思い浮かべるだけで胸が苦しくなります。

こんな風に生きていけたらいいなあ。