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「ペール・ギュント」について

 子供のころ、「コンサート・ブック」という大型の絵本が毎月家に届く時期がありました。「白鳥の湖」「サムソンとデリラ」「トゥーランドット」など、オペラやバレエの題材となる物語を絵本にしたものです。「サムソンとデリラ」には前髪を切り取られて力を抜かれたサムソンが、両目をえぐり取られ鎖につながれて労役をさせられてるシーンが描かれていて、今考えるとかなり衝撃的な絵本でした。

 

 そのシリーズの中に「ペール・ギュント」がありました今度RC青葉のコンサートでグリークの「ペール・ギュント」組曲から数曲をやることになり、もう一度その絵本を読みたくなって実家を探したのですが、悲しいかな、見つからなかったので、図書館で川崎洋訳の絵本を借りてきました。

 ペール・ギュントは放蕩息子のペールが純真な娘ソルヴェイグと恋に落ちるもあっという間に捨て、いろいろ「やらかして」いるうちに、母親オーセは「ペール、まっとうに生きて」と願いながら空しく死んでしまい、そのあといろいろ都合のいいことや悪いことが起きて最終的にはボロボロになって故郷に帰り、ずっと待っていたソルヴェイグの胸で死ぬ、という物語です。

 

 原作はイプセン。「人形の家」で女性の自立を描いたイプセンはノルウェーの出身で、実はノルウェーの国民性を嫌っていたそうです。古い道徳観にも批判的で、ノルウェーの伝説をもとに書かれた「ペール・ギュント」は、風刺的な作品のようです。

 

 有名な「ソルヴェイグの歌」は、放浪中のペールの夢の中でソルヴェイグがペールを待ちわびながら歌っているもの。物語の冒頭部分でちょっとペールと言葉を交わしただけのソルヴェイグが、おばあさんになるまでずっと待ってるなんて変だ、と子供心に思ったのを覚えています。男性にとっては若いころに捨てた純真な女性が、いろいろやんちゃをしてもずっと待っててくれて、よぼよぼになった自分を子守唄を歌いながら看取ってくれる、なんて、夢のような、いやまさに甘い夢の話ですが、これが皮肉の作品として書かれたとなれば私も納得できます。

 

 RC青葉の男性メンバーにこの話をして、「どうですか、男のロマンでしょう?」と聞いたところ、「いや、境遇があまりに違いすぎてピンとこない」という答えが。

 

健康的でホッとしました(^^)!